アサリとハマグリの外見は似ていますが、風味にはけっこうな違いがあります。
アサリには苦味があるのが特徴的で、一方ハマグリには甘みがあるのが特徴です。
外見は、その大きさが違うくらいにしか見えませんけどね…。
ですが、このアサリとハマグリ、それぞれの風味や大きさの違いを上手に料理で活かしたいところです。
この記事では、アサリとハマグリの風味の違いと、それぞれがどのような料理に合うかを探っていきたいと思います。
アサリとハマグリの風味の違いって?
アサリとハマグリの風味は似ていると思われがちです。
ですが、アサリには独特の苦味があり、ハマグリの方はより甘味を感じさせます。
貝には一般的にうま味成分が含まれているとされていますが、アサリとハマグリではこのうま味成分の比率が違うために、風味に違いがあるのです。
アサリとハマグリには「グルタミン酸」「グリシン」「コハク酸」といったうま味成分が豊富に含まれています。
中でも「コハク酸」は、独特の酸味と苦味の混ざった風味を出し、「渋味」や「えぐ味」としても感じられることがあります。
アサリにはハマグリに比べてコハク酸が多く含まれているので、これが苦味を感じる元なんですね。
アサリとハマグリ、それぞれに最適な料理は?
アサリは、味噌汁や酒蒸し、ボンゴレスパゲティ、クラムチャウダーなどによく合います。
アサリの苦味成分が料理に独特の風味を加え、味わいを深めてくれます。
ただし、うま味(時には苦味も)を生むコハク酸は、時間が経つと増えてきます。
アサリを砂抜きした後、2〜3時間以内に調理するのが望ましいですね。
それを過ぎてしまうと、苦味のほうが強くなりすぎる恐れがあるからです。
一方、ハマグリはその大きな身を活かして、焼きハマグリや鍋料理の具として使うのがお勧めです。
ハマグリのお吸い物もいいですよね!
ハマグリの出汁をしっかり取ることで、甘みが際立ちます。
また、ハマグリのお吸い物はひな祭りの料理を代表するものですが、これは「生涯にわたって一人の人と共に過ごせるように」という願いが込められています。
実はアサリもハマグリと同じように、他のアサリと貝の形がそろうことはないため、ハマグリの代わりとして使っても大丈夫ですよ。
アサリにコハク酸が豊富に含まれる理由は?
ハマグリに比べて、アサリの方がコハク酸が豊富に含まれているのは、生息環境が大きく影響しています。
アサリとハマグリは両方とも、淡水と塩水が混ざり合うところ、いわゆる「汽水域」に近い砂浜に生息しています。
ただし、アサリは地表から約5〜10センチメートルの深さに、ハマグリは15〜20センチメートルの深さに生息しています。
これにより、浅い場所に生息しているアサリは、潮の満ち引きによる影響をより強く受けるので、比較的ひんぱんに水面上に出てきます。
コハク酸は、生物が呼吸する過程で生成されて、消費される物質です。
潮の満ち引きにより呼吸が困難になると、アサリは生存するためにコハク酸をより多く生成するのです。
一方で、より深い場所に生息しているハマグリは、水面上に出る時間が少ないか、または常に水中にいるために、アサリに比べてコハク酸の生成される量が少ないとされています。
アサリとハマグリの見た目ってどう違う?
アサリとハマグリは大きさが違うこと以外に、似ているように見えて実際には見分ける方法があるんですよ。
アサリは大体3〜4センチメートルくらいの大きさで、貝殻には白、黒、茶、青などの色の幾何学的な模様や縞が見られます。
そして、その表面には放射状の細かい溝があって、触感はごわごわしています。
一方でハマグリは5〜6センチメートルくらいの大きさで、貝殻は主に白色がベースで黒や茶色の縦縞模様が特徴です。
形状はやや丸みを帯びた三角形っぽい形で、表面は滑らかで光沢があります。
アサリとハマグリは表面の質感が「ごわごわ」しているか「滑らか」かで、見分けることができます。
ハマグリがアサリよりも値段が高いのはなぜ?
生鮮品の売り場などで見ると、ハマグリはアサリよりも値段が高いですよね…。
それはなぜでしょう?
ハマグリは生産地が限られていて、漁獲量が少ないため値段が高くなってしまうのです。
特にハマグリは絶滅危惧種にも指定されていて、市場に出回るほとんどのものが海外産、特に中国からの輸入品です。
一方、アサリは日本国内各地で広く獲れるため、市場に出回る量がハマグリに比べて多くなっています。
結果として、ハマグリはアサリに比べて流通量が限られていて、特に国内産のハマグリは非常に珍重されるために、その値段が高くなっているんですね。
アサリとハマグリの美味しく食べるために
アサリとハマグリは一年を通して手に入りますが、特に旬の時期に食べると格別の味わいが楽しめます。
貝類の旬は、貝が産卵に備えて栄養を蓄える時期で、旬の貝は身がふっくらとして一層美味しくなります。
旬の期間は産地により若干の差はありますが、アサリは春の3〜4月と秋の9〜10月、ハマグリは春の2〜4月が旬となります。
旬のハマグリやアサリをより美味しく食べるコツとして、貝の砂をしっかり出すことがとても大切です。
市販のハマグリやアサリは砂出しされている場合が多いですが、それでも砂が残っている場合があります。
料理の味を損なわないためにも、砂出しをていねいに行うことをお勧めします。
アサリやハマグリの砂出しのコツは?
「砂出しをしたのに…砂が残る」という声をよく耳にしますが、正しい手順でやれば砂出しはそれほど難しくありません。
1.海水と同じ塩分濃度の塩水を作る
まずは海水の塩分濃度と同じ約3%の塩水を作りましょう。
目安としては、水500mlに対して、塩を大さじ1加えると、3%の塩分濃度になります。
手軽に作る方法としては、500mlのペットボトルに水を満たして、ボトルのキャップ2杯分の塩を加えるとよいですよ!
水温は20度程度するのが理想的、わずかに冷たい感触の温度が適しています。
2.ボウルや容器に貝を入れて塩水に浸す
大きなボウルや容器を用意して、貝が一つずつ重ならないように並べ、1で作った塩水を貝がちょうど顔を出すくらいまで注ぎましょう。
貝が重なっていると、一つが吐き出した砂を他の貝が吸い込む恐れがあるので、重ならないように一層に並べることが重要です。
貝全体が塩水に沈むと貝が呼吸できなくなるため、表面がわずかに見える程度に浸します。
3.容器をアルミホイルなどで覆い、冷蔵庫に1時間入れる
貝を入れた容器を新聞紙やアルミホイルで覆って、冷蔵庫に約1時間ほど入れましょう。
完全に密封してしまうと貝が酸素不足になるので、通気性を確保するために新聞紙やアルミホイルを使いましょう。
暗いところで貝が自然に砂を吐きやすくなるようにするためです。
4.容器から貝を取り出し、ざるに移して30分置く
容器から貝を取り出して、ざるに移して30分置いておきましょう。
こうすることで中の余分な塩水が出て、同時にうま味成分であるコハク酸が増加します。
5.貝を洗って砂や塩を落とす
最後に貝を流水で洗い、こすり合わせて外側の砂や塩を落としましょう。
これで砂出しは完了です。料理に使う下準備が整いました。
すぐに使わない場合は保存袋に入れて冷凍保管しておくと、調理する時には冷凍のまま使うことができます。
ハマグリは比較的砂が少なめですが、アサリは浅い場所に生息しているため砂を吸いやすいので、しっかりと砂出しするようにしましょう。
この記事のまとめ
この記事では、アサリとハマグリの風味の違いやどんな料理が合うのかなどについて書いてきました。
この記事をまとめると…
アサリについて
- サイズは3〜4センチメートルで、貝殻の表面にはざらつきがある
- 苦味のもととなるコハク酸を豊富に含まれている
- 日本各地で豊富に獲れるので、比較的値段が安い
- 主な旬は春の3〜4月と秋の9〜10月
ハマグリは…
- サイズは5〜6センチメートルで、貝殻の表面は滑らか
- アサリとにべコハク酸が少なく、味わいは甘い
- 限られた産地からの水揚げがなく、獲れる量が少ないため値段が高め
- 旬は春の2〜4月に集中
ハマグリとアサリ、それぞれには違いがありますが、どちらもとても美味しい出汁るので料理の味わいを豊かにしてくれます。